それがあってから藤壺の宮は宮中から実家へお帰りになった。 逢う機会をとらえようとして、 源氏は宮邸の訪問にばかりかかずらっていて 左大臣家の夫人もあまり訪わなかった。 その上 紫の姫君を迎えてからは、 二条の院へ新たな人を入れたと伝えた者があって、 夫人の心はいっそう恨めしかった。 真相を知らないのであるから恨んでいるのがもっともであるが、 正直に普通の人のように口へ出して恨めば自分も事実を話して、 自分の心持ちを説明もし慰めもできるのであるが、 一人でいろいろな忖度をして恨んでいるという態度がいやで、 自分はついほかの人に浮気な心が寄っていくのである。 とにかく完全な女で、欠点といっては何も…