吉村萬壱氏のCFを読んだ。罪の責任を取る必要がない「無化」を行ってくれる超巨大企業CFの物語。一体どのようにして無化するのかというのは、本書の中で説明されている。 二十一世紀の初頭、ルーマニアの頭脳集団「トランシルバニアの盾」に金の雨が降り(註 錬金術で、割られたユピテルの頭から立ち現れたパラッス・アテナの上に降り注いだ雨)、それによって観念の物質化と消去の技術である『ペルト加工』と『クレーメル処理』とが人類の手に落ちた。CFの技術はまさしくこれに基づいている。これによって加害者の責任が消滅する(『トリノ』の作用)ならば、それと同時に被害者の苦悩もまた消滅する(『ゾ・カレ』の働き)という事が起…