一条真也です。『探偵小説と日本近代』吉田司雄編著(青弓社)を紹介します。わたしは幻想文学(ホラー・ファンタジー)、SF、ミステリーが人間の「こころ」に与える影響というものに深い関心を抱いています。本書もその関心から読んだのですが、論考集なので硬めの文章が多かったです。しかし、わたしの知らないことがたくさん書かれており、興味深い箇所も少なくありませんでした。 本書のカバーには宝珠光寿の銅版画が使われており、表紙には「科学的な言説と大衆的な不安とが交差するなかから誕生した探偵小説は、時代をどのように表象してきたのか。近代文学の探偵小説的なるものの系譜を追いながら、魔的で奇怪な物語空間を縦横無尽に論…