飲み屋を出て、腕時計に目をやる。時間はもう既に午前2時を回っている。さすがに疲れた。俺は舗道を歩きながら、タクシーを探す。金曜日のこの時間帯、空車を探すのは難しいだろうか?…… 背後から、車のアクセル音。俺は振り向く。運が良いようだ。俺は手を挙げて、空車のタクシーを止める。タクシーの自動ドアが開き、俺は車に乗り込む。後部座席に座り込みながら、ネクタイの結び目に指を掛け、ネクタイを緩める。長かった一日がやっと終わろうとしている。 「どちらまで?」タクシードライバーが、やや身体をこちらに向けながら尋ねてくる。俺は目的地を告げ、座席に深く身体を沈める。さて、この車中の30分程の時間、どうやって過ごそ…