第三部、曾根崎心中。 これが「御観劇料8,000円」なのは、いろいろな意味で、すごいッ。 ■ ムラのない緊密性、かしらによる心理描写の表現力を感じる舞台だった。 私の考える「上手い人形遣い」とは、かしらによる表現に秀でた人だ。かしらだけで彼や彼女の内面を表現し、物語の表現に深みを与えられる人。今回の『曾根崎心中』の主役二人、和生さん、玉男さんは、現代文楽においてかしらの表現に秀でた人の代表だと思う。 お初〈吉田和生〉は、いつも以上に、心理描写に振って演じられているように感じた。特に「天満屋」では、お初の内へ内へと向かう心理を、かしらの微妙なニュアンスで細密に間断なく描写し、緊張感のある舞台を形…