太閤下官を招き呼て云わく 「哥讀まんと欲す。必ず和す。」 答て云く、「なんぞ、和し奉らざらんや」 「誇りたる哥になむ有る。但し宿講にあらず」 「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」 余申して云く 「御歌優美なり。 酬くひ答えるに方なし。只滿座、此の御哥を誦すべし。 元稹の菊の詩白居易に和せず。 深く賞歎して、終日吟詠す。諸卿 、余の言に響応し、度數吟詠す。 太閤和解し、殊に和責めず。夜深まり、月明るし。扶醉、各々退出す。 祝宴の席で生まれた望月の歌 望月の歌を伝えたのは藤原実資の『小右記』。 『小右記』によると・・・ この日、威子が皇后となった祝の宴が開かれたが、実資は道…