哲学者(1889-1960)。 旧制第一高等学校在籍中、歌舞伎座に出入りし、脚本演出を手伝う。 東京帝国大学卒業後、ハイデガーに師事する。 帰国後、日本古来の「風土」や東洋の伝統的特質を考察し、独自の思索を展開する。
『風土―人間学的考察』 『自叙伝の試み』 『イタリア古寺巡礼』 『桂離宮―様式の背後を探る』など
静けさに映るこころ ― 和辻哲郎『古寺巡礼』にみる日本的精神のかたち 和辻哲郎が二十五歳の折に記した『古寺巡礼』は、日本近代思想史において稀有な存在感を放つ随想録でございます。明治末期という文明転換の時代において、仏教美術を見つめながら、彼はそこにただ造形の美ではなく、日本人の精神性そのものを見出していったのでございます。本稿では、和辻のまなざしを通して古寺と仏像をめぐる旅の記録を読み解き、日本的精神のかたちを考察いたします。 一、時代の呼吸と個のまなざし 『古寺巡礼』が著されたのは大正三年(1914年)、すなわち文明開化の昂揚が一段落し、西洋的価値観が日本社会に深く浸透した時期でございました…
一昨日は日がな一日、じくじくと雨が降った。昨日は好天に恵まれたが、今朝はまた曇天で、霧雨と称ぶにも足らぬ細かい雨がかすかに降っている。 そんな空模様のもとでは草類が、ここぞとばかりに伸長してくる。霧雨を押して、眼にあまるものを少々引っこ抜いておくことにした。 まずは門扉を入ってすぐの一画。むかし盆栽棚だった残骸を横たえたり斜めにしたりして、寄せてある一画だ。いかなる加減か、拙宅最大のハルジオンの群落である。葉は下草類に紛れて早くから地表を覆っていたが、ここへ来て眼を瞠る速度で茎を伸ばし、もっとも目立つ存在となり、花を咲かせている。もういいだろう。今年度ぶんの役割は果せたことだろう。ご退場願うこ…
私は文学部で東洋史にいて、教授に「社会を描きなさい」とよく言われました。その関係で、中国社会について論じた文献を紹介します。 滋賀秀三教授著作目録 「清朝時代の刑事裁判――その行政的性格。若干の沿革的考察を含めて」『清代中国の法と裁判』所収 東アジアの王権と思想 増補新装版 - 東京大学出版会 とくに「儒者・読書人・両班――儒学的「教養人」の存在形態」 和辻哲郎 孔子 同じく和辻の 風土 - 岩波書店 CURATOR | 千葉大学学術成果リポジトリ 「生成する地域・地域意識-清末民国初期中国の華中南地域から東アジア比較史へ-」 著者のインタビュー 山田賢先生(歴史学コース) | 学生による教員…
一条真也です。今日は、2024年3月11日。能登半島地震の発生から71日目であり、東日本大震災の発生から13年目となるこの日、名著『天災と日本人』寺田寅彦著・山折哲雄編(角川ソフィア文庫)を紹介いたします。「寺田寅彦随筆選」というサブタイトルがついています。著者は、1878年-1935年。東京生まれ(高知県出身)。熊本の五校で夏目漱石に英語を習う。東大物理学科を卒業し、ヨーロッパ留学後、東大教授。理化学研究所、東大地震研究所の研究員としても活躍。物理学者、俳人、随筆家。 カバー裏表紙には、「長い時を経て日本列島に築かれた文明の本質を、自然科学と人文学の両面から明らかにした寺田寅彦。その鋭い考察…
『教養は培養である。それが有効であるためには、まづ生活の大地に喰ひ入らうとする根がなくてはならない。 和辻哲郎『偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集』(講談社)』 教養は大切です。 それをどのように培うのかについて示唆されているフレーズです。 一番注目するべきは「根」だと言うのです。 人間で分かりやすくするならば、「腸」という事ですね。 肉体を養うためには、栄養が必要不可欠です。 どれだけ、良いモノを食べたとしても、胃で分解し、腸で吸収しないならば、身になりません。 これは、最近のアレルギーの研究でも、腸環境に注目する傾向があります。 これが、丈夫なら人間的な生命力の基礎は盤石です。 もう一…
NHK Eテレの「ロッチと子羊」をたまに見るが、ためになることが多い。今日は和辻哲郎の考えが紹介されていた。 行為は常にすでに共同的なものであり、自分だけの行為は存在しないということである。失敗も成功も共同行為であり、自分が1番をとったり、賞を獲得しても、自分だけで成し遂げたものではないし、また、1番になれなかったり、賞を取れなかったとしても、自分だけの責任でもない。人間は「じんかん」と読むらしい。 人と比較したり、うらやんだりすることがあまり意味のないことに思えてくる。 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ ランキング参加中知識
厚生労働省ホームページに掲載されている「非正規雇用の現状と課題」の資料には、2010年以降に非正規雇用の増加が続いていることが記載されています(下記)。 出典:正規雇用労働者と非正規雇用労働者の推移(厚生労働省の報告書より)この資料と同じく、労働者の平均給与の推移をみると、やはり2010年頃を境として、平均給与がガクンと落ちていることが分かります。 出典:平均給与(実質)の推移(厚生労働省の報告書より)このことから、非正規雇用が増えたことで、労働者の給料が上がらなくなり、その結果、日本経済全体が低迷していると読み解くのが自然だと思います。わたしは非正規雇用そのものを悪い雇用とは思っていません。…
引用元:版元ドットコム 引用元:版元ドットコム 引用元:版元ドットコム 三島由紀夫『文化防衛論』ちくま文庫 (2006) 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー メモ "しかるに世間・世の中という言葉は、右のごとき社会の意を現しつつ、なおその上に古い伝統に従って何らか場所的なもの、絶えず推移するものという意を含んでいる" P37『人間の学としての倫理学』 三島由紀夫 "少し長くなりますが私の法秩序に対する考えを簡単に申しますと、私はこれからの日本にとってあぶない考えが一部にあると思う。それは秩序のためならイデオロギーなんかどうでもい…
(1) 「日本人の精神風土」を基準とする賃労働者への不信感の表明 黒田寛一は『実践と場所第一巻』(こぶし書房)で、「賃労働者としての日本人も、日本人らしさのようなものを喪失して無表情になり、日本人の精神風土とはおよそ無縁な存在になりさがり、彼らの感情も情緒も情動も干からびたものになっている。」(黒田前掲書572頁)と書いた。疎外された労働を強いられている労働者が、たとえばコールセンターで顧客からの理不尽なクレームに対応させられ、あるいは秒単位で作業効率を計測される倉庫作業で疲れ切り、何も考えずにひとりになりたいと思う彼、彼女らが、「無表情」でいてはいけないのか。むしろ、黒田はかれらの無表情の中…
読んだ本 引用元:版元ドットコム ゲーテ『ゲーテ全集 13 新装普及版』潮出版社 (2003) 高橋和巳『我が心は石にあらず』河出文庫 (2017) 三島由紀夫『文化防衛論』ちくま文庫 (2006) 引用元:版元ドットコム ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 三作目の小説を本格的に書き始めた。 一作目と二作目を繋ぎ合わせ、物語を再構成していきたい。 ベンヤミンが「力は即興にこそ宿っている」と書いていた。即興といえば、個人的にはフリースタイルラップ(即興ラップ)に最近魅了されている。暴言も多いが、勝ち残っていく人たちが紡ぎ出す言葉には力を確かに感じ…