【はじめに】 S 最初に印象を一言ずつ述べておきましょう。 S 自伝だから性の問題が書かれているけれど、鴎外の「ヰタ・セクスアリス」(1909)などに並ぶ作品かと。また、他の太宰の作品との重なりが大きいこと、とくに「葉」の哀蚊の婆様の話。それから、三章あたりから出てくるみよとの初恋の物語(フィクション)。これが後景で、自伝的記述(歴史)が前景になっていて、前景と後景が貼り合わされている。ところで、ここに示されているロシアの長篇小説とは何? ツルゲーネフの「初恋」だと思うのだけれど、どうだろう? K 四歳は満でいうと二歳少しで、よく記憶があるなあと。 S これは三島由紀夫が「仮面の告白」で述べた…