1953年(昭28)10月~1954年(昭29)12月 雑誌「婦人生活」連載。 1956年(昭31)朋友社刊。(プラタン叢書) 戦後昭和の女流作家は大抵名前だけは知っていたつもりだったが、この夏目千代は知らなかった。40歳近くになっていきなり処女作の長編を婦人雑誌に連載するというデビューの仕方だった。これは作者の半生記そのもので、すべての人物を実名で登場させている。祖母が端役の映画女優だったことから、彼女も舞台女優や映画女優の道を歩もうとしたが、やはり芽が出ない状況を諦めた矢先に、プロ野球投手の沢村栄治に出会う。恋を知った彼女はそれまでの人生への冷ややかな眼差しががらりと変わる。一途に思い続け…