宇野弘蔵が、マルクスは単純商品生産者からなる一社会を想定した、とみなしたのはなぜか 宇野弘蔵は、次のように主張した。経済学原理論は、商品・貨幣・資本という流通形態にかんする論述からはじめるべきであって、冒頭の商品論においては商品の価値の実体について論じるべきではなく、価値の実体たる抽象的人間労働については、流通論の次の生産論において、生産過程における労働の問題として論じるべきである、と。 彼は、このことを、『資本論』の冒頭の商品論は単純商品生産について論じたものなのか、それとも資本制商品生産について論じたものなのかというように、その理解をめぐって対立していたスターリン主義経済学者たちに対置した…