夕刻。敢えて時計は見なかったが夕刻のはずである。午後四時以降、六時よりは以前の時間帯。雨を孕んだ空気中に雨よりも春の緑を感じた。初夏の予感を孕んだ五月なかばのみずみずしい色と生命。植物は雨にも匂う。好天の時とは違う陰りを帯びた伏し目がちな青葉若葉の匂わせるもの。 唇。傘に隠れた横顔のかいま見えるごとくに見えて過って去った赤い唇。 時計を見に行った。ただ今の時刻を知るのにも部屋を出て広間へ向かう必要がある。午後五時四十五分。何てこった。すでに六時近かったとは。 だが夕刻である。 (5月13日) 日本人なんて大嫌いな愛国者。嫌な人ばかりじゃないから、 みんなを嫌いだなんて言えない。 (5月15日)…