おれはいつ死んでも平気だ。 死ぬのはちっとも恐くない。 と言う人がいる。 それは明らかに嘘だと、おれはおもう。 その人は、ふだん自分が尊敬している人なのだが、 それだけは、いくら言われても信用できません とおもうほかない。 しかし、本人が嘘を言っていると微塵もおもっていないのも分かる。 だから、それを口に出せば相手が怒るのは知れている。 生きるために切実に必要な嘘は、本人にとって真実である必要がある。 「嘘から出た誠」というやつだ。 人間は、この「嘘の誠」を、太古の昔からフル活用して、しぶとく生き残ってきたのだ。 これぞ、智慧の極みだ! と言う人もいる。 でもおれは、これが大嫌い。 嘘は誠にな…