『Red』と言うからには、貪りあいながら擦りながら熟れて赤々と熱っていく唇と唇との交わりを表しているのかと思いきや、単にグレーディング、ライティングのほどよい按配の調節に過ぎず、じゃあファーストカットの黒ずんだ布切れをまさかフィクションとしての赤の豊かさを示しているつもりなのかと呆れ果てる。いずれにせよ、このふざけた濡れ場の撮り方はありえない。 脚本が端的に優れていて、なんちゃらソバの蒸気をエモーションを醸し出す為に使ってみせたり、モックアップの家の窓から妻夫木を写して見せるジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』(1959)経由のサミュエル・フラー監督『四十挺の拳銃』(1957)オマー…