せっかくなので前回に引き続き、柞刈湯葉の小説を紹介しようと思います。 「重力アルケミック」は四大元素説が部分的に正しい世界での大学生活を描いたSF小説です。 重素と呼ばれる物質が重力を司る世界で、重素を採掘しすぎたために膨張が止まらなくなった地球、ついに東京―大阪が5000kmを突破した2013年春、福島からはるばる上京してきた大学生、湯川航が大学に入学することをから物語は始まります。 非生産的でありそうな大学生活と、重素や燃素、エーテルが実在する世界が上手く絡み合って不思議な現実感と日常感をもたらしてくれる前半が終わると、バイトしていた古本屋で発見した飛行機理論の本をもとに重素を使わず、揚力…