▶日本の都、すなわち天皇の御在所があった地は、これまで幾度も変遷を繰り返してきている。極めて大雑把に言えば、奈良と京都ということになるが、実は大阪や滋賀にも都があったことがある。滋賀の都というのは近江大津京のことで、天智天皇が667年に飛鳥の地から琵琶湖の畔の大津に遷都したものだが、670年の壬申の乱の後に皇位についた大海人皇子(天武天皇)が再び飛鳥に都を戻している。 ▶このあたりの事情は、少し日本史を勉強すれば必ず出てくることでもあるし、井上靖の小説「額田女王」にも当時の状況が瑞々しい筆致で書かれているので、とっつきやすくもあり比較的理解しやすい。しかし、大阪(難波)に都があったという話にな…