退院の日。父母と駐車場に向かっている自分に、これほど太陽が容赦ないとは思いも寄らなかった。異様に眩しく、フラフラする。アパートに帰ると、布団が敷いてあり、僕は横になって目を閉じる。病院のベッドとは違う、母の用意した清潔な寝床。とてつもなく安心して、夢の中に入って行く。4歳から見舞われた小児喘息は、自分自身の形成に深い跡を残している。それは、球体だとして、次第に小さくなり今はパチンコ玉くらいのイメージだろうか。喘息が治りかけた10歳ではドッジボールくらいの球体だった。この球体には、ヒューヒューと風のような発作の音、横になる自分を凝視する母の瞳、遠足のバスを窓越しに見つめる自分、扁桃腺の恐ろしい手…