(…)ミヤマクワガタは深山鍬形と書く。 深山の字から推測できるとおり、高山植物の仲間だ。時制の場合は初夏、六月あたりから紫色の小さな花を房状に数多く咲かせる。栽培下だと階下はもう少しはやく、ちょうどいまの時期からだ。 ここでいう鍬形とは農作業の道具ではなく、日本兜にみられる左右一対の角状の装飾を意味している。一般に、花の蕚の形状がその鍬形に似ているのが名前の由来とされているが、二本の雄蕊を鍬形に喩えたのだという説も聞いたことがあった。 地味な山野草ではあるが、高山植物にしては丈夫で、栽培は比較的むずかしくない。数年前にガーデニング愛好家から問い合わせがあって以来、この季節になると、ポット植えの…