「君はのちのちすべてを忘れる決心がついているんだね」 「ええ。どういう形でか、それはまだ分かりませんけれど。 私たちの歩いている道は、道ではなくて桟橋ですから、どこかでそれが終って、海が始まるのは仕方がございませんわ」 (『豊饒の海』「春の雪」より、松枝清顕と綾倉聡子との会話) 『豊饒の海』4部作のカギとなる「月修寺」 圓照寺はその「月修寺」のモデルです。 圓照寺を訪れた秋の或る日、 寺の山門へと登っていく道は 時折小雨が降る中、いろ鮮やかさを増した紅葉があるものの だれひとり歩く人もなく 唯々静寂が辺りを包み込んでいました。 (『豊饒の海』を読んでいない方はここから先には進まないでください。…