宮本常一の著作。 昭和30年頃、土佐・檮原村の橋下の粗末な小屋に住む盲目の老人から、その一生について聞き取り、老人の語り言葉そのままに書きしるした。夜這いの子としての少年時代、馬喰(牛の仲買)としての綱渡りの生活、様々な女性との遍歴、(数々の悪事がたたったのか)盲目になり、最後は散々粗末に扱ってきた妻の元に戻ったこと。そんなことが生々しく、そして生き生きと書かれている。
宮本常一 (1984年5月16日刊行、岩波書店[岩波文庫・青164-1])、東京, 334 pp., 本体価格553円, ISBN:4-00-331641-X → 版元ページ)ワタクシが本書を読んだのはいつだろうかと検索してみたら、なんと四半世紀前の2001年12月10日にかつてのオンライン書店 bk1 に書評を投稿していた事実が判明した。読んだだけではなかった。もちろん、当時の書評リンクはとっくに消え去っているが、手元にある書評原稿をここにそのまま再録しておこう。 「仄暗い実話」の数々本書のすべては実話なのだが,まさに民話のようだ.聞き取りをした著者の表現が魅力的なことももちろんだが,話し手…
木村哲也 (2024年7月20日刊行、河出書房新社[河出文庫・き17-1]、東京, 343 pp., 本体価格980円, ISBN:978-4-309-42125-4 → 版元ページ)【目次】 はじめに 3 1 ふるさとの島より――「私の祖父」「世間師(一)」山口県大島郡東和町長崎(現周防大島町)の旅 15 2 世間師に会いにゆく――「世間師(二)」大阪府河内長野市滝畑の旅 50 3 文字をもつということ――「文字をもつ伝承者(一)」島根県邑智郡瑞穂町田所鱒渕(現邑南町)の旅 87 4 篤農家の消えたあとで――「文字をもつ伝承者(二)」福島県いわき市平北神谷の旅 113 5 それぞれの「土佐源…
この6月、NHKテレビ「100分で名著」が宮本常一『忘れられた日本人』をとりあげていた。10年以上昔に読んだ私の記憶では、かなりきわどい性的な話が出て来る本だという印象が強かった。田植えをしながら女たちがするエロ話、夜這いのときに敷居におしっこをかけて音をたてないようにする話、まだ性的に未熟な男の子と女の子が性器で遊ぶ話、馬喰が庄屋の奥さんだったかと性的関係を持つ話などがあったなと思いながら今回、テレビ番組を見ると同時に、本も読みなおしてみた。私の記憶はまちがってはいなかったけれどもかたよってはいた。 この本は必ずしも性的なトピックだけを扱っているのではない。村の意思決定機構としての寄りあい、…
お姉ちゃんの翠くん 2 (マーガレットコミックスDIGITAL) 作者:目黒あむ 集英社 Amazon 6月25日の視聴 ・『SONGS「Mrs.GREEN APPLE」』 →Vocal大森元貴と、Guitar若井滉斗は中3の修学旅行からの仲。なんそれ。 →Keyboard藤澤は2人の3コ上。初対面で、誘われていきなりOK出す。軽いのかなんなのか。 →あ、3人で暮らしてんのね。 →誕生日会もクリスマス会もやるんか。3人で?! →まずは「青と夏」(2018)。 →2020年、1年8か月の休止からの、2022年の復帰。フェーズ2開始。 →お次は、大人の青春ソング「ライラック」(2024)。 →なん…
この前、民博に行ったこともあり、畑中章宏『NHK 100分de名著 宮本常一 忘れられた日本人 歩く、見る、聞く』を読んだ。民俗学者・宮本常一について勉強になった。 宮本常一の民俗学における位置づけについて、柳田国男や折口信夫は民間伝承などから「日本人の「心」」を探ろうとしたが、宮本は「目に見えない「心」ではなく、目に見える「もの」を民俗学の入り口」にしたというわかりやすい整理のされ方がされており、初学者にはありがたかった(p.5)。 「もの」への着目について考えてみると、渋沢敬三の「アチック・ミューゼアム」との関係が重要となる。1921年に設立、25年に改称したアチック・ミューゼアムは民具の…
忘れられた日本人 (岩波文庫) 作者:宮本 常一 岩波書店 Amazon 6月17日(月)に放送がある100分de名著『忘れられた日本人』第三回「無名な人が語りだす」について、解説者の畑中章宏さんが「放送テキストを手にしながら視聴していただきたい」とツイートされていたので、簡単に「レジュメ」をまとめて20(木)のclubhouseルームに供したいと思います。ご覧ください。 以下、テキスト文中の「小見出し」毎に内容をまとめていきます。 有名になった「土佐源氏」 文字による記録に残らなかった「小さな歴史」の掘り起こし。 土佐檮原の馬喰の生活誌(「土佐源氏」)など。 モノローグではない自分語り 「ば…
忘れられた日本人 (岩波文庫) 作者:宮本 常一 岩波書店 Amazon ようやく本書を読みましたっ!!!これは名著だ!!!これらの解説書も良かったっ!♪ lp6ac4.hatenablog.com lp6ac4.hatenablog.com 「柳田国男・渋沢敬三の指導下に、生涯旅する人として、日本各地の民間伝承を克明に調査した著者(一九〇七―八一)が、文字を持つ人々の作る歴史から忘れ去られた日本人の暮しを掘り起し、「民話」を生み出し伝承する共同体の有様を愛情深く描きだす。「土佐源氏」「女の世間」等十三篇からなる宮本民俗学の代表作」そのエッセンスを紹介しよう。 ・こういう山の中でまったく見通し…
政治資金問題をめぐる不祥事で「離党勧告」の処分を受けた安倍派幹部の世耕弘成前参院幹事長が四月四日に離党届を提出し、その際、記者団の取材に応じ「明鏡止水の心境。一番重い処分を誠実に受けたい。冷静な気持ちで政治責任を取って事態を収束させたい」と語った。前にも書いたことだが、処分ばかりでなくその他都合の悪いとき政治家はよく「明鏡止水」を口にする。 そこで『新明解国語辞典』(三省堂)は、《[曇りの無い鏡と静かにたたえた水の意]心の平静を乱す何ものも無い、落ち着いた静かな心境》と語義を示したうえで《[不明朗のうわさがある高官などが、世間に対して弁明する時などによく使われる]》と補足を加えている。さすが「…
『東京新聞』の記事; 坂本長利さん死去 俳優 2024年3月22日 07時26分 坂本長利さん(さかもと・ながとし=俳優)*120日、老衰のため死去、94歳。島根県出身。葬儀・告別式は26日午後1時から栃木県佐野市韮川町578の1、佐野斎場で。所属事務所「響和堂」*2が主催するしのぶ会を4月21日午後1時から東京都羽村市で開く予定。 民俗学者の宮本常一が高知県で聞き取った老人の一代記「土佐源氏」*3を一人芝居化し、50年以上演じた。テレビドラマ「Dr.コトー診療所」の村長役も演じた。 (後略) https://www.tokyo-np.co.jp/article/316576 忘れられた日本人…
俳優の坂本長利さんが亡くなられたことを、プロデューサー仲村さんから知らされた。 宮本常一著「土佐源氏」のひとり舞台。上演回数は1200回を超えた。宮本先生の故郷、周防大島公演は僕の知る限り3回。公演時はいつもこの沖家室で過ごされ、小庵鯛の里は坂本さんやスタッフの宿泊や料理の機会をいただいた。 かつては日活の映画にたくさん出演され、Dr.コトー診療所の村長役もされた。最近ではドラマ「深夜食堂」に出演され、味わいのある演技に魅了した。 リンクページは2019年。周防大島公演では90才を迎えられ、卒寿記念公演となった。その夜は、泊清寺で誕生祝いをした。あんなに元気だったのに。 ご冥福をお祈りします …
関連 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 関連 2023年 ami-gonag50.hatenablog.com 10月 9日 金原亭馬遊(58)落語家 脳室内出血 89年、金原亭伯楽に入門。92年二ツ目、01年真打昇進。ジョージ・バルドック(31)サッカーギリシャ代表DF 2010年プロデビュー。17年シェフィールド・ユナイテッドに完全移籍。2024年夏パナシナイコスと3年契約レイフ・セーゲルスタム(80)フィンランドの指揮者 フィンランド放送交響楽団など多くのオーケストラで活躍。300曲を超える交響曲を作曲7日 ジャック・ポンティ(66)プロデューサー、ギタリスト…
能登半島地震の被害状況がわかってくる。募金からとか、私にできることを少しずつしていくしかない。 それと、帰省中に被災したお友達に何かお見舞いをできたらと思う、落ち着いたら。 夕方、支援物資を輸送する海上保安庁の飛行機が羽田でインシデント。機長以外の5人が亡くなってしまった。辛い。 被災地も二次的な被害も、なるべくこれ以上広がらないよう願うことしかできない。 日常 goes on 食べて寝てダラダラしてただけのお正月らしい日。朝ごはんはおしるこ、おもちは2個。 夜は朝食べそこねたおじや(あるって言われてない!)と蟹とおせちの残りとスモークサーモンとか。やっぱりスモークサーモンが一番おいしい私はロ…
まずはChat GPTさんの答えから… 宮本常一の「忘れられた日本人」が高い評価を得ている理由は、複数の要素に基づいています。この作品は、昭和14年(1939年)以降、日本全国を歩きながら民間伝承を調査した宮本による著作で、日本の辺境地で暮らす人々の存在を歴史の舞台に浮かび上がらせるものとされています。宮本のこの研究は、柳田国男が言及を避けてきた性風俗や被差別民についての積極的な研究に特徴づけられており、フィールドワークに裏打ちされたエピソードが多くの読者にとって興味深いものでした。 この作品は特に、「女の世間」と「土佐源氏」という章が印象に残ると評されています。前者は農村の女性たちの…