かつて観文研(日本観光文化研究所)という組織があった。近畿日本ツーリストが1966年に設立した機関で、所長は民俗学者の宮本常一。その宮本は81年に亡くなり、研究所も89年に閉所した。 『宮本常一の旅学 観文研の旅人たち』(福田晴子、八坂書房、2022)という本を知ったとき、宮本常一と観文研の関係者について書いた本なんだろうと思って注文したのだが、届いた本は私の想像とは違った。誤解した私が悪いのだが、この本は、「宮本常一が旅をどう考えていたか」であり、その宮本のもとに集まってきた若者たちがどのように宮本に鍛えられたのかという教育論だった。 観文研という組織は、活字の世界ではよく知っているが、組織…