私は、作家の周辺にいた人物の回想記というやつがめっぽう好きで、しかもなかんずく恋人や伴侶といったパートナーの書いたものが好きである。とここまで打って、あれ、夫の回想記ってそういえばあまりないなあと思ったら、女性の方が基本的には長生きするということ、それから作家の絶対数が、昭和ぐらいまでだとどうしても男性の方が多いこと、といった単純な理由であることに気づいたので、別に書かなくても良かったのだが、引っ込みがつかないので結局ここまで打った。 個人的に、その種の回想記で群を抜いているのは、坂口三千代『クラクラ日記』(坂口安吾)、それから谷崎松子『倚松庵の夢』(谷崎潤一郎)だと思っている。まあ、独断と偏…