1892年東京生まれ。1981年没。詩人、翻訳家、フランス文学者。東京本郷生まれ。名前は本名で、父親が東大生でかつ東大の赤門近くで生まれたので名付けた。幼少期は新潟県長岡市で過ごした。慶應義塾大文学部仏文科中退。佐藤春夫とは大学時代からの親友。19歳から33歳にかけて海外で暮らした。ブラジルにいた大正8年に創作詩集「月光とピエロ」を出し、大正14年には近現代のフランス詩を翻訳した訳詩集「月下の一群」で日本の文壇に新風を吹き込んだ。アポリネールの名詩「ミラボー橋」など甘美な作風は、中原中也や三好達治など当時の若い文学者たちに多大な影響を与え、日本現代詩の発展に貢献した。
とくとくと戸口を
叩くものあり来るべき女も
あらぬ夜ふけをとくとくと戸口を
叩くものありわれ待つ友も
なき夜更けを―誰かゐるのか?
戸を引けば流れ入る月光
月光(つきかげ)/堀口大學