梅棹忠夫(1920 - 2010) 堀田善衞がアジア作家会議に出席するためにインドを訪れたのは昭和三十一年(1956)だが、その前年に、梅棹忠夫は京都大学カラコルム・ヒンズークシ学術探検隊の一員として、アフガニスタンからパキスタンを経てインドへ入っていた。ほゞ同時期に二人がインドをつぶさに観察および体験したことは、後年から思えば巨きかった。 『インドで考えたこと』(岩波新書、1957)のなかで堀田善衞はたびたび、憂鬱になったりヒステリー症状を起しそうになった自分を告白している。あまりに広大にして、あまりに複雑。猥雑と云ってもいいほど無限定かつ無際限な様相に、日本人としてなにからどう考え始めたら…