『東京日日新聞』の調査に信を置くならば、満洲・ソ連国境地帯はキナ臭いこと野晒しの火薬庫も同然であり、昭和十年と十一年と、たった二年の期間の中に四百を超す不法行為がソ連側から仕掛けられたそうである。 もっともこれはあくまでも、「事件」として表沙汰になり処理された数であったから、実際には更に、更に、挑発的侵入が相次いだと見て相違ない。 (Wikipediaより、日ソ国境紛争) 不安定も不安定、戦雲渦巻き四時暗澹たる彼の地の事情を『東日』記者は、 ――まるで異常痙攣症にかゝった人体のやうで事件が起ってゐることが常態であるやうにさへ見える。 このような比喩で以ってして表現したるものだった。 単純に、言…