1. 前々回まで見てきたように、~タと~テイルには、文の中で互いに交替してもその意味が損なわれないような、共同の領域が存在する。テイルの「過去的用法」(井上優)と呼ばれる領域がそれである。 次のような例が挙げられよう。 「このところ世界各国で著名人が相次いでなくなっていますが、日本では、現代を代表する作曲家の一人である武満徹氏がさる2月20日になくなりました / なくなっています。」(cf. 井上優「現代日本語の「タ」」, p115-6) 上のように一つの文を抜き出してみればシタでもシテイルでも許容されるものの、その文が属するテクストにおいては、どちらか一方が適切な表現となる、という場合がある…