夜のさいころ 川端康成 気持ちを仄(ほの)めかすのが文学の特徴 察(さっ)してください。 恥ずかしくて口には出せません。だからお願いですから私の気持ちを察してください。 そんな乙女心を、どのように演技で表現するか。いろいろ考えながらお読みください。 夜のさいころ 川端康成 「さいころ頂戴(ちょうだい)。これとおなじの五つ頂戴。」 「五つ?さあ、そこに出てるだけしかありませんよ。二つだね。」と、店の人がさいころの方へ来た。 「二つ頂戴。」 そこから河岸へ出た。 みち子は早速(さっそく)、岩の上に、さいころを振った。 水田はみち子の手つきを、しばらく見ていてから、 「なにか占ってくれよ。」 「なに…