大弐は源氏へ挨拶《あいさつ》をした。 「はるかな田舎《いなか》から上ってまいりました私は、 京へ着けばまず伺候いたしまして、 あなた様から都のお話を伺わせていただきますことを 空想したものでございました。 意外な政変のために御隠栖になっております土地を 今日通ってまいります。 非常にもったいないことと存じ、 悲しいことと思うのでございます。 親戚と知人とが もう京からこの辺へ迎えにまいっておりまして、 それらの者がうるそうございますから、 お目にかかりに出ないのでございますが、 またそのうち別に伺わせていただきます」 というのであって、 子の筑前守《ちくぜんのかみ》が使いに行ったのである。 源…