想念を押しこたえることができなかった。それほど自分で自分の思いに心をひしがれたのである。彼は径の両側につらなる、幾百年かへた松の並木をじっと見つめた。その径は大して長いものでなく、僅か五百歩ばかりにすぎなかった。この時刻に誰とも出くわすはずがないと思っていたのに、突然はじめての曲り角にラキーチンの姿が見えた。彼は誰やら待ち受けていたのである。 「僕を待ってるんじゃないの?」アリョーシャはそばへ寄ってこう訊いた。 「図星だ。君なのさ。」ラキーチンはにやりと笑った。「僧院長のところへ急いでるんだろう、知ってるよ。饗応があるんだからね。大主教がパハートフ将軍と一緒にお見えになったとき以来、あれほどの…