『闇を泳ぐ : 全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。』 木村敬一著 (ミライカナイ, 2021.8) 金髪のバティー教授は、「彼は「チャレンジ・パーソン」よ」と、僕に紹介した。僕は、意味が分からず「彼は、何にチャレンジしているのか?」と、聞くと、一瞬、沈黙が訪れた。教授室の窓から赤く色づいたメープルリーフが揺れていた。「彼は何事にもチャンレジしている」と、彼女は微笑んだ。 2004年の出来ごとだ。僕はカナダのトロントに留学していて、一緒に医学教育のワークショップをやってくれる仲間を探していた。教授秘書が、彼を連れてきた。彼は、電動車いすに乗り、僕に握手を求めてきた。僕は、慌てて左手を差し出し…