現代詩人、批評家。 1931年(昭和6年)2月16日、生まれ。2017年(平成29年)4月5日、死去。 詩集『記憶と現在』や評論『紀貫之』で名を馳せる。 1979年より、朝日新聞で『折々のうた』という連載を持っており、日本の詩壇・歌壇をリードする人物の一人、と言えそうだ。 変わったところでは、アメリカの現代詩人、ジョン・アシュベリーの翻訳(米文学者との共訳)も行っている。
このごろは、夜明け前の東の空を見上げるのが楽しみだ。明けの明星(金星)が輝いているからだ。「いつせいに春の星座となりにけり」(黒田杏子)という句がある。今日は立春。この日が来ると、黒田の句のように昨日までは冬の星座だったものが、今日からは春の星座へと変化し、明けの明星の輝きも春の足音を告げてくれるように思えるのだ。 先日まではこの星の近くに、三日月が見えた。夜明け前の空を競うような輝きに、寒さを忘れて見入ったこともある。2月は一年で一番寒い季節だ。山形の友人が送ってきた自宅周辺の風景の写真を見ると、丈余の雪が積もっていて、とても春の足音が聞こえる状況ではない。しかし私の住む千葉周辺では紅梅に続…
ものの本(ある事柄に関することやその方面のことについて書かれた本)によりますと、「時雨」の季節は、『万葉集』(7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、現存するわが国最古の歌集)のころは秋と捉えられていたそうです。その後、都が奈良から京都に移ってから作られた『古今和歌集』(平安時代中期の勅撰和歌集)のころからは次第に冬という季節に考えられるようになり、俳句でも現在は冬の季語になっています。今年は7日が立冬でした。天気予報では今夜(8日)あたりから時雨が降りそうです。いよいよ冬なのですね。 《冬のはじめ、晴れていても急に雨雲が生じて、しばらく雨が降ったかと思うとすぐに止み、また降り出すというこ…
詩作をするほどではないが、詩をよむのは好きな方だ。谷川俊太郎、田村隆一、茨木のり子、西脇順三郎、鮎川信夫に、最近ハマった草野心平などなど。これらの詩人の名を聞くと、代表作のタイトルや詩の一片くらいは浮かんでくる。ところが、大岡信となると、彼のコラムの「折々のうた」が頭に浮かぶだけで、彼の作品や詩を知らないことに気づく。作品を読んだのは評論やアンソロジーだけだ。 岩波新書で「大岡信 架橋する詩人」という彼の評伝が出ていたので、買ってみた。著者の大井浩一さんは毎日新聞の編集委員だそうだ。大学を出て、読売新聞に入社した大岡信さんが、その後、朝日新聞で「折々のうた」を連載して、没後、毎日新聞の記者が評…
死にたくはないかと言へば これ見よと 咽喉の痍(きず)を見せし女かな 積読本の拾い読み。その面白さは、例えばこんな短歌と出会えることです。なんとも大人の世界。これを名品とは言わないけれど、ちくりと刺さったりして(わたしだけ?)。 ちなみに、この歌が詠まれたのは明治の終わりごろ。出てくる「女」は、釧路の芸妓・小奴。石川啄木「一握の砂」にある歌で、何首かこの「女」が詠まれています。ちなみに啄木はこの時、妻子ありの既婚者。単身赴任中に小奴と深い仲に...。 えっ、啄木が?。あの抒情詩人の?。そうなんです。 啄木といえば 働けど働けど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざりぢっと手を見る や 東海の小…
2月16日誕生日の全国35万人の皆さん おめでとうございます。 (拙句)ためらわず丈夫と呼ぶ花ローズ 雅舟 【花】レンテイローズ 【花言葉】 丈夫 【短歌】おもむろに咲きしと思う庭隅のレンテイローズに春の雪降る ようやく花を咲かせようとしていた庭隅のこの花に淡雪が降りかかっています。開花はもう少し先になりそうです。 【季語】早春 春浅し 春寒し 【俳句】 早春の空間君とのあいだにある 関谷 寛一呂 春浅し保母になりたい絵馬揺れる 川崎 美知子 春寒し俺より長い影の俺 柴崎 甲吉 【三行詩】何より丈夫なことは美徳 失えばそのことは分かる その前に気が付きたい 【万葉歌】 丈夫のゆくといふ道そ凡ら…
谷川俊太郎「風穴をあける」を読む2 谷川さんが初めて読んだ本は野上弥生子さんの「小さき生きもの」だったと言う。「・・この本を幼い私が好きだったかというとそんなことはなくて、退屈で退屈で死にそうだったのを覚えている。それなのに捨てなかったのはどうしてだろうか。理由はただひとつ、読んだ本がその人間の人生の一部になってしまうからである。」 本書前半の読む・書くに続く、後半のテーマは人。そのトップバッターに写真家荒木経惟さんが登場する。彼の写真が無意識に依拠していて、言葉を介在させない表現であることを書いている。おそらくは無意義から発する表現を大切にしてきた詩人との共通項を感じたのであろう。 また大岡…
とっくの昔に読み終えている「大内義隆の遷都計画」。 うまく感想が書けなくて、情けない気持ちになっているおっさんです。 それはさておき。 先日、書き写していると書いた「第十 折々のうた」。 今日でようやく16ページ。 第十 折々のうた (岩波新書) 作者:大岡 信 岩波書店 Amazon 1ページに、2つ、3つのうたしか写せないのでまあまだ30に余る程度しか書いていないということですね。 春のうたで始まっているので、このままでは夏に変わるにも相当な時間がかかりそうです。というか一冊写したときにはノート何冊になっているんだろうか。 ほんまに写経感覚だな。 遅き日や土に腹つく犬の伸び 三宅嘯山 あと…
ワークワーク。やる前はあまりふくざつでないと思っていたワークが、手がけてみるとふくざつであった、というパターンに突き当たり、ウンウン唸りながらやる。時間をかければすすむタイプのワークではあったので、想定の3倍ぐらいの時間をかけてぶじ完了させる。返金、メールには全額と書いてあったが、処理ページを見てみると全額でなく、少額とはいえそのごまかしに腹が立つので再度問い合わせをする。こういう対応をされた場合、ふだんならぜったいに再利用しないが、クライアントが使用しているツールなのでふたたび使うことになるのがつらい。なんでこんな馬鹿みたいな対応でいいと思っているんだ。正気かよ。個人間だったらまだしも、それ…
巖谷國士によればシュルレアリスム絵画にはデッサン・オートマティックの流れとデペイズマンの流れがあるらしい。デッサン・オートマティックはアンドレ・マッソンやジョアン・ミロによって試みられたいわゆる自動筆記のようなもので、日本では瀧口修造。デペイズマンはコラージュの方法を用いるもので、写実的な物体が結びつくことによる超現実の方法である。日本では澁澤龍彦。 そして日本では後者の方法が主流だったことが板橋区立美術館で始まった「シュルレアリスムと日本」でよくわかる。砂漠とも砂浜ともとれる地面、遠くに見える水平線、その上に置かれる柔らかい物体、虫たち(特に羽虫やカマキリ)そのどれか1~2個のモチーフが必ず…
歌仙の満尾を寿いで,三浦雅士氏、長谷川櫂氏の対談を、近くでうかがえて楽しかったですね。 三浦氏は「虚構と人生」みたいな、いわばプルースト的な命題から始まって、多様な話題を悍馬に例えるなら、それぞれの馬に目いっぱい鞭をくれながら,何頭も繋いだチャリオットを思った方向に向けていくというディオクレスも土下座する手綱さばきをみせつけていらっしゃいました。 詩の書かれた場所、歌仙の場というものから、地霊について話が及び(ドゥエンデなんて言葉きいたの何十年ぶりかしら)、大岡信の「宴と孤心」の「宴」というものにどうやって落としてゆくのかな、とよそながらに危惧していたら、見事に山中温泉と、大岡信丸谷才一、井上…
巻頭のうた み吉野は山もかすみて白雪のふりにし里に春は来にけり 作者は藤原良経という人物。 でも、源平の争乱期をすぎて、摂関家が五摂家に分裂していく過程なので、九条良経とも書かれるみたいです。 ja.wikipedia.org 死因が「頓死」と書かれていて、 kotobank.jp 落馬でもして亡くなったのだろうか?と思っていたのですが、 www.youtube.com この藤原良経の百人一首に選ばれている歌の解説動画を見てみると、「やりで突かれて亡くなった」とのこと。 ひぇ!後鳥羽院の院政下で、どれほどの権力があったか、おっさんはわかりかねるのですが、摂政が「就寝中にやりで突かれて死ぬ」って…
古本市に行って見つけることができたら買おうと思っていた「折々のうた」の全巻セット。なかなか古本市に行く機会もなく、いつ買えるかもわからないので、Kindle版で購入していくことにしました。 で、最終巻の「第十 折々のうた」から買うことにしたのですが、実はまだ「新折々のうた」という風に少しだけタイトルが変わって続いていたことが判明。一番近いものからさかのぼって買っていくというおっさんの目論見はまんまと失敗したのでした。 第十 折々のうた (岩波新書) 作者:大岡 信 岩波書店 Amazon で、読むだけでなくノートに書き写しています。 おっさん、子どもの頃は詩歌はあまり好きではなかったのですが、…
訓読 >>> 723常世(とこよ)にと 我(わ)が行かなくに 小金門(をかなと)に もの悲(がな)しらに 思へりし 我(あ)が子の刀自(とじ)を ぬばたまの 夜昼(よるひる)といはず 思ふにし 我(あ)が身は痩せ(や)せぬ 嘆くにし 袖(そで)さへ濡(ぬ)れぬ かくばかり もとなし恋ひば 故郷(ふるさと)に この月ごろも ありかつましじ 724朝髪(あさかみ)の思ひ乱れてかくばかりなねが恋ふれそ夢(いめ)に見えける 要旨 >>> 〈723〉あの世に私が行ってしまうわけでもないのに、門口で悲しそうにしていた我が子よ。留守中に私に代わってつとめる刀自(主婦)のことを思うと、夜も昼も心配で私はやせて…
訓読 >>> 3937草枕(くさまくら)旅(たび)去(い)にし君が帰り来(こ)む月日を知らむすべの知らなく 3938かくのみや我(あ)が恋ひ居(を)らむぬばたまの夜(よる)の紐(ひも)だに解(と)き放(さ)けずして 3939里近く君が業(な)りなば恋ひめやともとな思ひし我(あ)れぞ悔(くや)しき 3940万代(よろづよ)に心は解けて我が背子(せこ)が捻(つ)みし手見つつ忍(しの)びかねつも 3941うぐひすの鳴くくら谷にうちはめて焼けは死ぬとも君をし待たむ 3942松の花(はな)花数(はなかず)にしも我(わ)が背子(せこ)が思へらなくにもとな咲きつつ 要旨 >>> 〈3937〉(越中に)旅立っ…
訓読 >>> 1122山の際(ま)に渡る秋沙(あきさ)の行きて居(ゐ)むその川の瀬に波立つなゆめ 1123佐保川(さほがは)の清き川原に鳴く千鳥(ちどり)かはづと二つ忘れかねつも 1124佐保川に騒(さは)ける千鳥さ夜(よ)更けて汝(な)が声聞けば寝(い)ねかてなくに 要旨 >>> 〈1122〉山あいを鳴き渡る秋沙鴨が飛んで行って降り立つのだろう。その川瀬に波よ立つな、決して。 〈1123〉佐保川の清らかな川原に鳴く千鳥、そしてカジカガエルの鳴く声は、どちらも忘れられない。 〈1124〉佐保川で飛び跳ねている千鳥よ、夜も更けてきてお前が妻を呼んで鳴く声を聞いたら、寝ようにも寝られない。 鑑賞 …
(※このブログはアフィリエイトしています。) 更新:H氏賞、現代詩人賞、詩人クラブ三賞、 詩歌文学館賞、大岡信賞 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 更新:中原中也賞 西脇順三郎賞 福田正夫賞 詩と思想新人賞、ユリイカ新人 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 詩の賞は、大きなものは詩集単位での応募がほとんどです。 つまり応募するのに詩集を作る必要があります。 一篇の詩から応募できるものは: 詩の雑誌での毎月の(季刊なら季節ごとの)投稿で、 年間通して優秀な新人を選ぶもの、 または都道府県、市町村が開催する賞にもあります。 NEW!詩と思想新人賞 第3…
2月16日誕生日の全国35万人の皆さん おめでとうございます。 (拙句)ためらわず丈夫と呼ぶ花ローズ 雅舟 【花】レンテイローズ 【花言葉】 丈夫 【短歌】おもむろに咲きしと思う庭隅のレンテイローズに春の雪降る ようやく花を咲かせようとしていた庭隅のこの花に淡雪が降りかかっています。開花はもう少し先になりそうです。 【季語】早春 春浅し 春寒し 【俳句】早春の空間君とのあいだにある 関谷 寛一呂 春浅し保母になりたい絵馬揺れる 川崎 美知子 春寒し俺より長い影の俺 柴崎 甲吉 【三行詩】何より丈夫なことは美徳 失えばそのことは分かる その前に気が付きたい 【万葉歌】丈夫のゆくといふ道そ凡らかに…
【記憶のなかの詩句】「夜はいまだ、青梅の未熟さなので」(大岡信) 大岡信の詩のなかの一行であるが、演出家鈴木忠志率いる、劇団「スコット」富山県利賀村公演での、ギリシャ悲劇の「トロイアの女」か「バッコスの信女」に出てきた。看板女優、白石加代子の口から、上の言葉が飛び出すと、それはとたんにリアルな現実となって、私の記憶に定着した。いま、地震で、利賀村はどうなったか。気になるところである。