【第7章 広域への初陣 】(2) 忠明は美鳥に室戸港に近い町中で一軒の割烹店を持たせようとする。「まだ早いぞね。あてらぁまだ女中でえいぞいね」と言う美鳥を忠明は無理にも独立させて、店に「美鳥」の名を付けた。美鳥は二十歳であった。 開店前の祝宴の夜、忠明は皆を集めた席上で「わしはいよいよ第二号忠豊丸をつくるぞ。いよいよ全国への出陣やぞ。一番槍は九州進出や」と宣言する。 その第二号忠豊丸が進水したのは大正10年の初冬。淡路の造船所で船を受け取った豊三郎が、花岐港を経て室戸港にやって来た時には、もう12月も半ばであった。豊三郎は24歳。いっぱしの仲買人であり、一人前の船乗りになっていた。この時に豊三…