明治四十五年七月三十日 日本では天皇が崩御せられ在留邦人は謹んで喪に服した。 翌三十一日 年号は大正元年となり在留邦人は皆黒の服装を着る事となった。 大葬遥拝式は九月十二日午後九時(国内では十三日)第七街と五十七丁目角のカーネギーホールで行われた。式は高峰譲吉博士の辞で始まり正面の幕が開かれ明治天皇の御真影が見受けられた。遠く異国にいる我々は只々哀悼の意を表するのみである。 大正二年は夢の様に過ぎた。私も一年半をニューヨークで過ごし、図案も少しは役に立つ様になり、アメリカの様子も大体判り今回の渡米の目的も略、達せられたので、ひと先ず帰国する事となり、大正三年一月中旬ニューヨークを出発、二月十日…