「ウチのアヘンはもの(・・)が違う。紛れもなく、世界最高品質だ。一度でもその味を知ってしまえば、二度と再び他国製では満足できなくなるだろう――」 そのトルコ人の自慢話がまんざら誇張でもないことを、大阪朝日の特派員・高橋増太郎は知っていた。 彼が派遣されたこの当時、トルコ共和国は国際連盟に未加入な立場を最大限活用し、アヘンの輸出に極めて積極的な状態にある。1927年だけでも三十五万七千六百キログラムを生産し、その輸出額は千四十四万リラに上ったというから大したものだ。 建国間もないトルコにとって、これほど好都合な「特産品」もなかったろう。 彼らはまた、自分たちの商品が如何に高品質を保っているかを科…