歳はとりたくねえもんだの、くーさん。昔なら三日とかからなかったろうに、最近はのんびりかい。まあ、若え時分と同じにやれってほうが無理な話だがの。 ...と、「天切り松 闇語り」(浅田次郎、集英社)を読み終え、わたしは登場人物の東京弁(いうまでもなく標準語とは別物)を真似て独りごちたのでした。1日に1話か2話を楽しみ、シリーズ5冊読了まで3週間余り。昔は一気読みが得意技でした。人間、若いころは急ぎ、老いて娑婆にいられる残り時間が短くなるほど逆に気長に構えるんだろうか。 天切り松が語る昔話を読みながら、わたしは盗人・松じいさんの心の<芯>について考えていました。<芯>の通った人間の言葉には説得力があ…