1906年(明39)春陽堂刊。前後2巻。池雪蕾(いけ・せつらい)訳。原作者は英国の小説家ウィリアム・ル・キュー (William Le Queux, 1864-1927)、 父親がフランス人だった。出版当時はなぜか「ラ・キューズ」と表記された。原題は「仮面」(マスク Mask)ロンドンで1905年に出版されたばかりで、雪蕾がすぐに翻訳にとりかかったらしい。身寄りのない可憐な女性は知的でたしなみもあり、主人公守雄の心を惹きつけたが、過去を一切語ろうとしない。偶然ある男の死に際に目にした文書に彼女の名前を見つけて、その過去の謎を解こうと奮闘する。宝石泥棒や遺宝探しなどをめぐって多くの人物が入り乱れ…