急に思い立ち、ひとり、アパートの裏にある森の中を散策した。面積が東京23区の2倍くらいしかないコンクリートジャングル香港では、こうした天然の森がある環境は本当に貴重だ。特に香港島は硬い岩盤でできているために土がほとんどなく、樹木が育ちにくいのだ。このアパートに住むことにしたのも、緑豊かな自然が決め手だった。なのに、夏の間は虫も多いし、森は鬱蒼としていて、人通りもほとんどないので、普段、滅多に足を踏み入れることはない。しかし、なぜか今日に限って、静かに自然の中で過ごしたくなった。 気温は20度。寒くはないが、曇っていて、空気はひんやりと心地よい。小川に沿ってゆっくりと晩秋の森を歩く。途中、だれが…