1912年(明45)矢島誠進堂刊。明治期の探偵実話を題材とした講談筆記本。前後続の全3巻。演者の太年社燕楽(たねんしゃ・えんらく)は大阪の講談師の長老格で本名は伊藤伊之助、それ以上の情報はほとんど不明。筆記本はあまり出ていないが、弁舌巧みで多少説教じみているが堂々とした語りである。 物語の前半は、娘を唆して横浜で質屋を経営する青年から資金を搾取する親の無軌道と青年の転落話。後半は高崎の大店の身代を乗っ取ろうとする男女の策謀。何れの場合も色の道で失敗させられる善玉の男たちを描きながらも、いかに失地回復の上に勧善懲悪に至るかを語り尽くしている。☆☆☆☆ 国会図書館デジタル・コレクション所載。口絵は…