一条真也です。たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。今回の「こころの一字」は、「奇」です。 日本人は「奇」を好むとされます。司馬遼太郎は、敵方の艦隊前でターンする東郷平八郎の奇策で日本海決戦を制したさまをドラマティックに描いた『坂の上の雲』に次のように書きました。「戦術の要諦は、手練手管ではない。日本人の古来の好みとして、小部隊をもって奇策縦横、大軍を翻弄(ほんろう)するといったところに戦術があるとし、そのような奇功のぬしを名将としてきた。源義経の鵯越の奇襲や楠木正…