長崎の原爆を題材とした映画や文学はないものかと思い、探してみると黒澤明『八月の狂詩曲(1991)』がありました。原作は村田喜代子『鍋の中(1987)』です。私が無知でした。 広島に原爆が落とされたのは8月6日、長崎は8月9日でした。たった3日とはいえ、「世界で初めて原爆が落とされた国」として圧倒的にヒロシマが有名になったため、ナガサキは比較的影が薄い印象でした。 ところが、長崎県出身の福田須磨子がおりました。須磨子は当時23歳、勤務中に被爆します。自宅にいた両親と長姉は被曝死しました。翌年、高熱、疲労感、脱毛の症状が出、10年後、エリテマトーデスを発症。病床のなかから詩を綴り、『詩と随想・ひと…