著者、三田村鳶魚(みたむらえんぎょ)は江戸風俗研究の大家で膨大な文献を残したが、そのコンパクト版が稲垣史生編集の「江戸生活事典」。コンパクトといっても500頁に細かい文字がぎっしり詰まっているので読むのは大変であります。自らは明治生まれなのに、江戸の市井の細部を自分で見てきたかのように書く。現代でいえば、杉浦日向子さん(故人)のような「江戸のことなら何でも訊いてんか」の博学者でありました。 江戸時代の相撲についてもあれこれ書いていて、現代の相撲の原形は元禄時代に成立したと述べている。原形とは勧進相撲、すなわち「興行」としての相撲が世間に広まったとことをいう。勧進元(プロモーター)と力士と観客に…