宮沢賢治が親友保阪嘉内との別れを描いた「図書館幻想」には、ほぼ同じ内容の三つの作品があります。散文の「図書館幻想」、口語詩の「ダルゲ」、文語詩の「われはダルケを名乗れるものと」の三つで、それぞれの形式の違いから賢治の意図を読み取ることができます。 保阪嘉内は、賢治が盛岡高等農林学校時代、同人誌「アザリア」を立ち上げて将来共に進もうと誓い合った親友でした。『銀河鉄道の夜』でジョバンニが、「僕たち一緒に行こうねえ」と語りかけたときにはいなくなっていたカムパネルラのモデルの一人ともいわれています。しかし、1921(大正10)年、二人は国立国会図書館の前身のひとつで上野にあった「帝国図書館」で別れ、そ…