公営の温水プールで、こんなことを見た。日曜日の午後、プールの更衣室に、小学校高学年の男の子とその父親とが入ってきた。空いたロッカーは、少なかった。子供は、気が急いている。着替えるのが早い。父親は、壁ひとつ隔てた反対側のロッカーを見つけたらしい。そして、驚くなかれ、こう言った。「あとから言って悪いけど、こっちのロッカーに入れないかい」。息子は、ふん、とうなずいて、シャツとズボンとを持って、移っていった。これを、気がきいて優しく、よい父親というのだろうか。子供を大切に育てていることになるのだろうか。「こちらのロッカーに入れなさい」の一言で十分である。遠慮がちの猫なで声で、わが子にへり下るのなら、い…