日本には、春夏秋冬という豊かな四季がある。 季節が変われば、空気の匂いも、着るものも、食卓に並ぶ料理も変わっていく。 その移ろいの中で暮らしていると、自然と「季節に寄り添う味覚」というものが育っていくのだと思う。 コーヒーの世界でも、季節限定のブレンドがすっかり定着した。 大手チェーンも、街角のロースターも、季節の風を感じさせる一杯を競うように作り出している。 けれど、エカワ珈琲店は少し違う道を歩いてきた。 喫茶店から自家焙煎店へ衣替えして三十数年。 一度も「季節のブレンド」を作ったことがない。 作らなかった理由は、頑固さでも、流行への反発でもない。 むしろ逆で、季節に合わせて焙煎を微妙に変え…