「続々 岸惠子語録」 「孤独という道づれ」(幻冬舎文庫)より 私の人生、並みではなかった、というか現在進行中でもある背負いきれないほどの艱難辛苦(古い言葉!)をもてあまし気味に、もう、いいよ、疲れたよ、とも思う。 エピローグ から わたしが、数年来、よけられる言葉の決定版はこんな風である。 「お若く見えるわ!」 「若く見えているんじゃないの。若いの!」 相手はきょとんとする。 追い打ちをかけるようにわたしは言う。 「何もかも一人でやっているわたしには、山ほどの苦労があって、皆様のように幸せな皺を刻んでいる暇などないの」 相手はますます怪訝な顔をする。 「傍らに夫という人がいて、おおぜいの子や孫…