歌舞伎役者・中村富十郎。
上方系統の役者。
「娘道成寺」を創始した名跡として知られる。
現在まで五代を数える。
屋号・天王寺屋
歌舞伎役者としては、当代一の舞踊の名手。品格があり、振りの切れがよく、何歳になっても衰えない「富十郎ぶり」は、人間国宝の名に恥じない。何がすごいって、歌舞伎をまったく知らない人が富十郎の踊りを見て、何を表現しているのかちゃんと理解できてしまうのである。真の名人芸とは決して難解なものではないという証明だろう。
また口跡の心地よさも無類。脚本の理解力も抜群で、時代物世話物いずれにおいてもハズレの演技を見せない。特に新歌舞伎における朗読術のみごとさは、父・4代目や市川寿海、そして武智鉄二の教えを直接受けた最後の人である点でも、もう今後聞くことは出来ないかもしれない。
舞踊の当り役「舟弁慶」を、2003年(平成15年)11月、歌舞伎座で舞い納める。