何につけても出だし(・・・)というのは重要だ。 演説の妙技は開幕直後の五分間にこそ尽される。 「私はお話をする前に、禅宗の法として五分間静坐を致します」 釈宗演という僧の、これが決まり文句であった。 (Wikipediaより、釈宗演) 冷静に考えればなんと横柄な註文だろう、客を馬鹿にするにもほどがある。そんな準備は登壇前に舞台裏で済ませておけというものだ。なにも態々、話聴きたさにやって来ている人間集団の目の前で、瞑想を実演(や)る必要はない――。 ところがいざ宗演が目蓋を下ろすと、そうした諸々の不満一切、喉の奥で行き場を失い、腹の底へとトンボ返りをした果てに、湯を注がれた海苔の如くほろほろと、…