クッツェーの小説を読むのは『夷狄を待ちながら』 Waiting for the Barbarians (1980) に次ぐ二作目だ。悲惨なのに目を背けることができない、読む手が止まらない、主人公の個性が強烈な印象を残す、といったような感想は二作に共通する。1983年にブッカー賞を受賞した『マイケル・K』Life and Times of Michael K (1983)は、以前から気になっていた作品だが、あえてこのタイミングで(心が弱っているこのときに)読むことができてよかったと思う。主人公マイケル・Kの過酷な生き様に、不思議と「安らぎ」のようなものを感じ、最後には「静かな光」が灯されるからだ…