元は信濃国の守護大名家 小笠原氏、といえばなにが思い出されるだろう。兵法・礼法の小笠原流を思い浮かべた方は相当に博識の人といっていいのではないか。小笠原氏は甲斐源氏の一族であり、甲斐(山梨県)の武田氏と並ぶ名門である。源平合戦で活躍して以来、鎌倉、室町と武家の時代に大きな勢力を誇った。ちなみに、阿波(徳島県)に居住した一族からは戦国時代に入って三好長慶が現れている。 そして、この小笠原氏は兵法、軍学、礼法――すなわち弓馬の道(武士としての心得)に詳しく、そのことでも厚く遇された。故に鎌倉幕府から江戸幕府まで、武家政権において小笠原氏は師範を務めたというのだが、これはあくまで伝説だ。実際のところ…