の家で見ておいたんだ、――君のためにさ、お爺さん、君のものだよ。これはあの人の家にあったって、何にもなりゃしないんだ。あの人はこれを兄弟からもらったんだからね。そこで、僕は親父の戸棚から、『マホメットの親戚、一名馬鹿霊験記』という本を引き出して、この大砲と取っ換えっこしたんだ。それは、百年からたったものなんだ、とても大変な本でね、まだ検閲がなかった時分、モスクワで発行されたものさ。ところが、モローゾフはそういうものが大好きなんでね。その上お礼まで言ったよ……」 コーリャは、みんなで見て楽しまれるように、大砲を手にのせて、一同の前へさし出した。イリューシャも身を起した。そして、やはり右手でペレズ…
を、忘れたかったからかもしれません……そうです、まったくそのためなんですよ……ええ、ばかばかしい……幾度あなたはそんなことを訊くんです? ただでたらめを言ったのです、それっきりです。一どでたらめを言ってしまったから、もう訂正したくなかったんです。人間というものはどうかすると、くだらない動機からでたらめを言うものですよ。」 「ドミートリイ・フョードロヴィッチ」と検事は諭すように言った。「どんな動機から人が嘘を言うかってことは、容易に決定できるもんじゃありません。ときにお訊ねしますが、あなたの頸にかかっていたその守り袋なるものは、大きなものでしたか?」 「いいえ、大きくはありません。」 「例えば、…