いつの頃からか、 世界は「一人ひとりの感じの良し悪し」で できているものではなくなった。 レジの前で交わされる短い言葉も、 歯科医院の一連の動きも、 誰かの親切や不機嫌の結果ではない。 そこには、 役割があり、 配置があり、 導線があり、 オペレーションがある。 人は、その流れの中に 自然に置かれている。 以前は、 ひとつの視線、 ひとつの言い方、 ひとつの態度に、 いちいち意味を探していた。 あの人は冷たい。 この対応は虚しい。 もっと人間的であるべきだ。 点に触れるたび、 心はざわつき、 知らず知らず疲れていった。 けれどある時から、 視界が静かに変わった。 その人が「どういう人か」より先…